今年の暫定No.1邦画は「渇水」主演の生田斗真はジャニーズの宝である。だが…
姉妹と近い年ごろの息子をもつ岩切には家庭内での悩みもあり……そんな彼が「流れ」を変えるべくとった行動とは? 社会の底辺で貧困を生きる者たちのドラマとして、是枝裕和やケン・ローチの作品群を思い出す人も多いであろう傑作だ。
『渇水』には同名の原作がある。1990年の芥川賞候補にもなった河林満の小説だが、作品も作者も有名とは言いがたい(映画を配給するKADOKAWAが4月に文庫で復刊した)。
河林は2008年に57歳で他界したが、彼の友人に映画化の検討をもちかけられた髙橋は、同い歳の脚本家・及川章太郎と組んで脚本化を進めた。すでに10年ほど前から映画業界では「いい脚本があるらしい」と評判になっていたという。
■社会の格差がより広がった現在で…
事態が大きな展開を見せるのは、『孤狼の血』シリーズで日本映画界を牽引する存在となった白石和彌監督が脚本に惚れ込み、企画プロデュースに参画してから。『渇水』の仕上がりが白石の作風とはまるで異なるところに、髙橋+及川コンビと同世代のぼくは胸が熱くなる。無名の先輩・髙橋の才能を尊敬する「大後輩」白石のやわらかな眼差しが、この作品の背骨にはある。