初主演映画を撮ってくれた“職人監督”・渡辺祐介さんとの思い出
このシリーズの後、アタシにお声をかけてくださったの。「男はつらいよ」の女版をやりたいってことで、研ナオコに白羽の矢が立ったわけ。結局、「美女シリーズ」を3本やらせていただいたの。
当時は映画監督って怖いイメージがありましたけど、すごく優しくしてくださって、他のスタッフやキャストに気を配るし、人当たりはいいし……おまけに顔がいいんですよ(笑)。いや、ホントに俳優さんになった方がいいんじゃないかって思ったほど。
その後、監督がインタビュー番組に出られたときに、誰か会いたい人はいませんかって聞かれ、「研ナオコ」ってリクエストしてくださったの。何年ぶりかでお会いして久しぶりにいろんなお話をさせていただいて……このときのことは忘れられません。
58歳。若くして亡くなられたんです。とにかく、どんな形でもいいからお別れをしたいと思った。普通はマネジャーについて行ってもらうんですけど、そのときは一人で、ご葬儀が行われている京都のお寺を探して行きました。
アタシの不良仲間で、堺正章さんの恋人役として共演した子が結婚して子供もできて京都に住んでたの。彼女が「子供がいて行けないから、私の分までお願いね」って。行ったら、親戚の方や映画関係の方がたくさんいて……もう、そんなこと関係なしに、監督のそばに行きたくてね。やっとの思いで棺の近くまで行ったけど、お焼香もできず、ただ呆然と監督の遺影を見ていたことを、いまも鮮明に覚えています。
(構成・藤井優)