クロちゃん、ナダル、鈴木もぐら…秋の番組改編で「クズ芸人」が大躍進のなぜ
今なぜ“クズ”であるはずの芸人が支持されるのか。その主な理由として、コンプライアンス重視が叫ばれるテレビ界との関係性が挙げられる。BPOが“痛みを伴う笑い”を問題視する中で、罰ゲームやドッキリ企画は以前のように安易にはできなくなった。
■テレビ規制の網をかいくぐる
そんな中で、「クズ芸人たちが制裁を受ける」という構図はいじめを連想させにくい。加えて、番組上の演出が一歩間違えば“やらせ”だと叩かれる時代、「やらせなら暴露するはず」というクズ芸人ゆえの信頼感すらある。
ギャンブル癖や借金癖、悪態などをとがめられても、反省するどころか「自分は正当である」とご高説を垂れるため人格者とは程遠いイメージだ。
ただ、だからこそマジメな一面が垣間見えた時のギャップが大きく、好感度も上がりやすい。
つまり、多くの視聴者にとって「自分とは違う人」という程よい距離感があり、仲間意識を持つ者、不可解な言動に興味を抱く者からは支持される。ドッキリを受ければ「自業自得」、奔放な言動には「嘘がない」。規制が厳しくなったテレビ界の網の目も見事にかいくぐっている。
妙な話だが、クズ芸人は今のバラエティーにもっとも必要とされる奇跡的な芸風なのだろう。
(鈴木旭/お笑い研究家)