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立岩陽一郎ジャーナリスト

NPOメディア「InFact」編集長、大阪芸大短期大学部教授。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て現職。日刊ゲンダイ本紙コラムを書籍化した「ファクトチェック・ニッポン 安倍政権の7年8カ月を風化させない真実」はじめ、「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」「トランプ王国の素顔」「ファクトチェックとは何か」(共著)「NHK 日本的メディアの内幕」など著書多数。毎日放送「よんチャンTV」、フジテレビ「めざまし8」に出演中。

大谷翔平選手の声明を巡る報道を考える…ファン心理が識者の発言に影響を与えてないか

公開日: 更新日:

「あんな奴をテレビに出すな」「バカ野郎」――私へのこんな非難や中傷が数日続いた。

 ドジャース大谷翔平選手(29)が日本時間3月26日、水原一平元通訳(39)に関する声明を発表、筆者が同日放送のフジテレビ「めざまし8」で語ったことについてのネットの反応だ。予想されたことなので特に気にはならないが、こうした反応に識者が影響を受ける懸念を感じたので書いておきたい。

 この日の大谷選手の声明の読み上げは、記者の質問を受けない形式となっていた。大谷選手は、水原一平氏が違法賭博を行ったこと、違法賭博に自身が関与したことは一切ないこと、水原氏に嘘をつかれていたことなどを説明し、この問題に関する水原氏とのやり取りを時系列で説明した。

 その中で、違法な賭博への自身の関与がないこと、水原氏が大谷選手の口座に無断でアクセスして賭博の胴元に450万ドルを支払っていたとの点は、明らかになったといえるだろう。現地で会見に出席したスポーツジャーナリストからは、大谷選手の説明に好意的な評価が聞かれた。

 ただ、私はそう簡単に「これで納得」とは思えなかった。私は番組MCの谷原章介さんに会見について感想を問われ、以下のように語った。

「もし私があの場にいたら、絶対聞くのは、『では、なぜ水谷さんは送金ができたのですか?』(『水原さんが』と谷原さんから訂正が入る)あ、水原さんが。で、ここなんですよ。誰も、少なくとも私の周辺で、大谷選手が賭博をやっていると思っている人は誰もいませんよ。だけどその送金に、不正とされる送金に、なぜ大谷さんが把握できなかったのか、という疑問がみんなあるわけですよね。で、もし、村尾先生(カリフォルニア州とニューヨーク州で弁護士登録をしている村尾卓哉弁護士)がおっしゃるよう、弁護士の村尾さんがおっしゃるように、それは捜査の重要な部分だ(から話せない)というなら、『それは敢えて言いません』と言えばいいだけの話。それにまったく触れないというのは、私は、もしその場にいたとすれば、一番大きな疑問として感じる部分です」

 私が語ったのは、大谷選手の声明では、なぜ水原氏が、大谷選手がまったく把握せずに送金できたのかという疑問が残ったというだけのことだ。普通に考えて、それに異を唱えることは困難だろう。

 もちろん、大谷選手のファンが私の発言に不快感を覚えることも当然で、その結果、ネットに「こんな奴テレビに出すな」と書く気持ちは理解できるし、それは自由だろう。別に気にするものではない。

 ただ、こうしたファンの心理が、テレビに出演する識者の発言に影響を与えてないか、その点に懸念を覚える。例えば、私が疑問に思った点について、識者らが、捜査に係ることなので話せなくて当然だという趣旨の発言がなされている場面が散見された。それは、「めざまし8」で声明の内容を分析する趣旨での村尾弁護士の説明とは異なり、一種、話せなくて当然だというニュアンスで語られていた。その際の指摘は、どのように水原氏が大谷選手の口座にアクセスしたかは犯人だけが知りえる「秘密の暴露」にあたるので語れないというものだ。また、大谷選手は水原氏がどうアクセスしたかを知らないわけだから、それを語ると「推測」「憶測」になるという。

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