著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

小泉今日子&小林聡美「団地のふたり」何十年も寝かした結果の付加価値

公開日: 更新日:

 プレミアムドラマ「団地のふたり」(NHKBS)の舞台は、築58年になる夕日野団地だ。

 大学非常勤講師の野枝(小泉今日子)とイラストレーターの奈津子(小林聡美)。2人はこの団地で生まれ育った幼なじみだ。若い頃は結婚や仕事で他の街に住んだりしたが、今は団地の実家で暮らしている。どちらも55歳の独身だ。

 このドラマで最も魅力的なのは彼女たちの関係性かもしれない。保育園に始まり、小学校も中学校も同じ地元の公立で、ずっと親友だった。今は奈津子が作った夕食を差し向かいで楽しんでいる。

 昔のことも今のことも、たわいない話を延々と続けられる相手がいるシアワセ。野枝が仕事で落ち込んだ時、奈津子は何も聞かずにわざとバカなことを言って笑わせる。

 そして「大丈夫、私はノエチ(野枝の呼び名)のいいとこも悪いとこも知ってるから」と励ますのだ。

 そんな2人の日常は淡々としているが、小さな出来事は起きる。野枝の兄(杉本哲太)が保存していたオフコースなどの古い「楽譜」を、奈津子がフリマアプリで出品すると高額で売れたのだ。

 何十年も寝かした結果の付加価値。「この団地も立ってるだけでそうなったらいいなあ」と奈津子。「そうなったらすてきだね」と野枝。見ているこちらもつい、「人間もそうだといいね」と応じたくなったのは、このドラマの滋味のせいだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    平野紫耀から杉咲花に「翠ジンソーダ」キャラクターわずか1年でバトンタッチのナゾ…平野ファン大混乱

  2. 2

    小芝風花は大河「べらぼう」とBS時代劇「金と銀2」“NHK掛け持ちW主演”で大丈夫なの?

  3. 3

    自公維の「高校無償化」に慶応女子高の保護者が動揺? なぜだ?

  4. 4

    中村芝翫「同棲愛人と破局宣言」で三田寛子の夫婦関係はどうなる? “梨園の妻”の揺れる心中

  5. 5

    佐々木朗希「通訳なし」で気になる英語力…《山本由伸より話せる説》浮上のまさか

  1. 6

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

  2. 7

    吉沢亮のアサヒビールだけじゃない!業界別CM「絶対NG」のタレントたち…ケンカ、運転事故、不倫はご法度

  3. 8

    開成合格でも渋幕に入学する学生が…強力なライバル校出現で揺らぐ唯一無二の存在

  4. 9

    【福井県おおい町】名田庄の自然薯そばと「大飯温泉」

  5. 10

    確率2%の抽選で10万円で永住権を手にした在米邦人が語る 7億円「トランプ・ゴールドカード」の価値