小泉今日子&小林聡美「団地のふたり」何十年も寝かした結果の付加価値
プレミアムドラマ「団地のふたり」(NHKBS)の舞台は、築58年になる夕日野団地だ。
大学非常勤講師の野枝(小泉今日子)とイラストレーターの奈津子(小林聡美)。2人はこの団地で生まれ育った幼なじみだ。若い頃は結婚や仕事で他の街に住んだりしたが、今は団地の実家で暮らしている。どちらも55歳の独身だ。
このドラマで最も魅力的なのは彼女たちの関係性かもしれない。保育園に始まり、小学校も中学校も同じ地元の公立で、ずっと親友だった。今は奈津子が作った夕食を差し向かいで楽しんでいる。
昔のことも今のことも、たわいない話を延々と続けられる相手がいるシアワセ。野枝が仕事で落ち込んだ時、奈津子は何も聞かずにわざとバカなことを言って笑わせる。
そして「大丈夫、私はノエチ(野枝の呼び名)のいいとこも悪いとこも知ってるから」と励ますのだ。
そんな2人の日常は淡々としているが、小さな出来事は起きる。野枝の兄(杉本哲太)が保存していたオフコースなどの古い「楽譜」を、奈津子がフリマアプリで出品すると高額で売れたのだ。
何十年も寝かした結果の付加価値。「この団地も立ってるだけでそうなったらいいなあ」と奈津子。「そうなったらすてきだね」と野枝。見ているこちらもつい、「人間もそうだといいね」と応じたくなったのは、このドラマの滋味のせいだ。