俳優・声優の田中正彦さん 主治医の言葉で胃がん手術決意
2014年の4月末、人間ドックを受ける数日前に、友人と福岡でめちゃくちゃ飲んだんです。飲み過ぎて胃が痛かったので、検査の日も“こりゃ胃炎と言われて再検査になるだろう”とは思っていました。それがまさか「がん」で胃を半分切ることになるとは……。
自覚症状はありませんでした。深酒すると吐くようになっていたことは確かですが、それは後になって思ったこと。当時は「年のせい」としか思っていませんでした。
実は09年にパートナーを肺がんで亡くして以来、彼女の遺言を守って、1日2箱吸っていたたばこをやめ人間ドックを毎年欠かさず受けていたんです。だから大丈夫だとどこかで過信もありました。
ただ、必ず3月に受けていた検査を、あの年は舞台出演があって4月末まで受けられなかった。今にして思えば、それがよかったのかもしれません。福岡で友人と酒をたらふく飲む前だったら胃炎もなく、再検査にもならず、多少調子が悪くても次の3月まで放置していたに違いないですから。
それにしてもビックリしたのは、がん告知の瞬間です。医師がデータ画面を見ながら独り言のように「ああ、これ、がんだな」とつぶやいたんです。思わず「え?」と思っていると、「でも大丈夫、初期だから」と軽く言うんです。その医師に紹介された国立がん研究センターで改めて検査した結果、がんの進行度はステージ1。それでもやはり、パートナーの闘病を見ていただけに、がんと言われてかなりショックを受けました。