血液中の“警備員”好中球と有害物質の闘い 傷口の膿の正体

公開日: 更新日:

 好中球に取り込まれた細菌は、次の3つの手段で殺菌されることになります。ひとつは酸素系の働きで活性酸素、過酸化水素、次に亜塩素酸を発生させて殺菌します。もうひとつは、顆粒から放出される加水分解酵素などで殺菌します。さらに、近年になって「NETs」と呼ばれるクロマチン(真核細胞に存在するタンパク質)の網を形成して微生物をとらえることも知られるようになりました。

 しかし、好中球は体液性免疫細胞(体液の抗体が働いて抗原を排除する免疫)へ細菌を抗原としては提示しません。好中球が処理できなかった細菌などの異物は、マクロファージ(単球が組織に入って変化したもので、死んだ細胞やその破片を捕食し消化する)などが貧食します。さらにマクロファージがこの異物を抗原として提示すると、Bリンパ球も形質細胞に変わって抗体を作り出します。これが体液性免疫の獲得です。

 この現象は、日常でも経験することができます。例えばガラスの破片などで手足に傷をつけてしまったとき、傷口が治りかけに発生する膿が、細菌と闘って死んだ好中球の死体なのです。

(東邦大学名誉教授・東丸貴信)

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    前田健太「ドジャース入り」で大谷との共闘に現実味 日本復帰より「節目の10年」優先か

  2. 2

    井桁弘恵ショートカットで“山之内すず化”が加速! 「そっくり問題」いよいよ待ったナシ

  3. 3

    大阪万博は開幕1カ月を待たずトラブル続出…場当たり説明でGW後半の盛り上げムードに水を差す協会の大罪

  4. 4

    巨人阿部監督はなぜ田中将大にだけ甘いのか…2試合連続炎上でさすがに二軍調整も

  5. 5

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”

  1. 6

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  2. 7

    ダウンタウン復帰が外部資金でコンテンツ配信のナゼ…松本人志に浮上した疑惑の顛末

  3. 8

    斎藤元彦・兵庫県知事が頑迷に貫く「治外法権」…公益通報を巡る国の勧告もガン無視

  4. 9

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  5. 10

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???