血液中の“警備員”好中球と有害物質の闘い 傷口の膿の正体
好中球に取り込まれた細菌は、次の3つの手段で殺菌されることになります。ひとつは酸素系の働きで活性酸素、過酸化水素、次に亜塩素酸を発生させて殺菌します。もうひとつは、顆粒から放出される加水分解酵素などで殺菌します。さらに、近年になって「NETs」と呼ばれるクロマチン(真核細胞に存在するタンパク質)の網を形成して微生物をとらえることも知られるようになりました。
しかし、好中球は体液性免疫細胞(体液の抗体が働いて抗原を排除する免疫)へ細菌を抗原としては提示しません。好中球が処理できなかった細菌などの異物は、マクロファージ(単球が組織に入って変化したもので、死んだ細胞やその破片を捕食し消化する)などが貧食します。さらにマクロファージがこの異物を抗原として提示すると、Bリンパ球も形質細胞に変わって抗体を作り出します。これが体液性免疫の獲得です。
この現象は、日常でも経験することができます。例えばガラスの破片などで手足に傷をつけてしまったとき、傷口が治りかけに発生する膿が、細菌と闘って死んだ好中球の死体なのです。
(東邦大学名誉教授・東丸貴信)