なぜ「おひとりさま死」は在宅を選択肢に入れるべきなのか(1)
「おひとりさまが在宅で最後まで幸せに過ごすうえで重要なのは、医療と介護の質です。まず、医療の質で言えば、病院で入院加療することよりも在宅診療でしっかり診てもらうことは延命や緩和という視点から有利であると言えます。まともな在宅診療ならば、内科、外科、整形外科、精神科、緩和ケアのどの分野に対しても責任を持てる前提で開院しており、『専門外だから病院に行ってください』ということにはなりません」
もちろん、がんの終末期における緩和ケア病棟なら、全身状態を総合的に管理しながらサポートをする。しかし、それ以外だと大きな病院であればあるほど、それぞれの専門に分化された病棟に入院することになる。
「病気が重度であればあるほど、心疾患、呼吸器疾患、精神疾患などさまざまな症状が併発するなかで、状態に応じた柔軟な対応が求められます。専門に分化した病院だと、専門外の事態が起きると医師ならば本来誰でもサポートできるような症状でも、専門の医師に相談することになります。多様な視点から多様なドクターが診るといえば聞こえはいいが、実際には重症度が高い疾患の入院加療では、『縦割り医療』の弊害が出ていることが多いのです」(つづく)