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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

井川意高大王製紙元会長が「開成」を外して「筑駒」「麻布」を受験した納得の理由

公開日: 更新日:

「日銀総裁候補の植田和男さんが在学していた頃が筑駒の一番良かった時代だと聞いている」と話すのは大王製紙元会長の井川意高氏(58)。1977年、筑波大学付属駒場中学(筑駒)に入学した。当時の校名は東京教育大学付属駒場。翌年から現在の校名になった。

 13歳上の植田氏が筑駒中に入学した64年の大学受験戦線は都立の全盛期。50~60年代前半、東大合格者数トップ5は日比谷や西などの都立高がほぼ独占していた。植田氏が入学する前年、筑駒は初めて東大合格者数トップ10入り。以降は一度もトップ10から外れておらず、名実ともに超進学校の座を揺るぎないものにしている。

 井川氏は植田氏がいた60年代を「伝説を創った」と称賛。各生徒が自立心を強く持っていた。「それは僕らの時代にも受け継がれ、自由を存分に謳歌した」と話す。

 中学受験の際、併願したのは同じ男子中高一貫校の麻布。筑駒と同様、自由な校風で知られる。「父が学校のそうした姿勢にこだわった」と振り返る。大王製紙創業家2代目の父・井川高雄氏は仕事には厳しかったが、「遊びは豪快にしろというタイプ」だった。規律を重んじる開成ではなく、筑駒と麻布を受けることを息子に勧めた。井川氏はどちらも合格し、筑駒に進んだ。

両校とも校則らしきものがない自由な校風

 国立と私立の違いはあるものの、両校はよく似ている。服装は自由。以前はどちらも制服があったが、筑駒は60年代、麻布も70年代前半に廃止した。井川氏が植田日銀総裁候補が在学していた時代を「伝説」と評したのは、生徒会の議決によって制服廃止が決まったからである。自主性を重んじる筑駒ならではのエピソードだ。

 校則らしきものもない。「ガムを噛んではいけないのが唯一の校則」と筑駒の20代OB。麻布も似たようなもの。「学校で店屋物をとってはいけないのが校則だと聞いたことがある」と80代OBは笑う。いずれも常識の範囲の話で、校則として明記されているわけではなさそうだ。

「自由なのは生徒だけでなく、教師も同じ」と井川氏。筑駒では各教師に与えられている裁量は大きく、授業内容も自分で決める。多くの教師は教科書を使わず、自ら用意したテキストで授業を進める。井川氏が受けた高1の日本史では明治6年の政変がテーマ。高3になっても、まだ明治14年をやっていたと苦笑する。

「一方、教科書の内容しかやらない授業もあった。そうした教師は副業に熱心で、予備校で名前を変えて講義をしていた。さすがに今はそんな教師はいないと思いますが」

 筑駒から東大に進むのは生徒の約6割。7割を超える年も珍しくない。

「高3の秋まで筑駒の生徒の模試結果はそれほど良くないのに、12月あたりからぐっと伸びてくる」と予備校スタッフは話す。普段のゆとりが最後に並外れた集中力を生み出すのかもしれない。 



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