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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

東大理Ⅲの現役割合は8割超 超名門中高一貫校のズバぬけた生徒だけが合格する構図と弊害

公開日: 更新日:

「村の神童レベルでは現在の東大理Ⅲにはとても入れない」と嘆くのは東大医学部元教授。1970年代前半に理Ⅲに入学した。

 2023年度の理Ⅲ合格者(一般入試全97人)の上位は(1)灘15人(2)桜蔭11人(3)筑波大学付属駒場7人(4)駒場東邦5人(4)東海5人(6)聖光学院4人(6)ラ・サール4人(8)開成3人(8)麻布3人。鹿児島のラ・サールを除けば、いずれも3大都市圏の中高一貫校。そのラ・サールも東大合格者ランキング常連の名門校だ。

「特筆すべきは智弁和歌山が2人の合格者を出し、10位に入ったことくらい。他は例年とあまり代わり映えしない。しっかり準備している中高一貫校の生徒でないと理Ⅲ合格はおぼつかない」(大手予備校幹部)

 驚くのは現役割合の高さだ。一般入試合格者の8割超が現役。「進学校の中で飛び抜けて出来る生徒がすんなり合格するというのが近年の構図」(同)だという。「僕らの時代は現役のほうが少なかった」と振り返るのは前出の元教授だ。

「最近は裕福な家庭の子ばかり。あの頃も金持ちの家が多かったが、地方のあまり有名でない高校出身の苦学生もけっこういた。顔ぶれもバラエティーに富み、学園生活を謳歌できた。今の理Ⅲは平板な感じがする」

■「医師になりたい」ではなく「勉強が出来るから」挑戦

 こう話す元教授だが、自身は開業医の息子。中学・高校も、当時から超難関校として知られる東京教育大学付属駒場(現・筑駒)に通い、理Ⅲに現役合格している。

「ただ、教駒の理系で一番優秀だった同級生は東大理Ⅰに入っている。当時、理Ⅲを目指す受験生は医師になる明確な意志を持っていたが、いつ頃からか医療への強い思いが感じられなくなった」

 その背景として、元教授は理Ⅲがあまりに難しくなりすぎたことを挙げる。医学部の偏差値上位には東大、京大、東京医科歯科大、大阪大、慶大などがくるが、この中で理Ⅲが圧倒的にハードルが高い。国内の全大学・全学部の中で最難関であるのは間違いないところだ。

「医師になりたいからではなく、勉強が出来るから理Ⅲに挑戦するという逆転現象が起きている。自身の優秀さを確認し、誇示するための場所になってしまった」(同)

 理Ⅲでは東大入試で唯一、試験合格者に対し面接が行われている。99年度から実施され、07年度を最後に中止していたが、18年度から11年ぶりに復活した。

「医師としての適性を見るためですが、ほぼ全員がそつなくこなし、ほとんど意味のないものになっていた。再開したのは、理Ⅲを売りにクイズ番組などに出る者が現れ、彼らは本当に医師になる気があるのかという批判の声が強まったためです」

 いきさつを知る元教授はこう説明し、「大学側のアリバイ的な要素が強い」と自嘲気味に語る。24年度はさらに難易度が上がるとみられる理Ⅲ。わずかな枠しかないだけに、本気で医療の道に進もうという者だけが目指してほしいものだ。



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