3人の女性オーナーが挑戦!フードトラック経営奮闘記

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「ALCA DELI.」菅原優美子さん

 コロナをきっかけに、店舗以外の新たな販売手段を模索する飲食店が増えている。そのひとつがフードトラックだ。フードトラックを経営する3人の女性オーナーを追った。

 ◇  ◇  ◇

 いつか飲食店をやりたかったという菅原優美子さんは、知り合いの店で商売のイロハを学び、昨年6月にフードトラック「ALCA DELI.」を開業。北九州・門司港名物の焼きカレーの専門店で、牛スジのうま味が凝縮されたカレーの上にチーズをのせ、一つ一つを石窯で焼く本格的なものだ。

「フルタイムで事務などの仕事をしていましたが、退職を機に、フードトラックにチャレンジしようと考え始めました。新型コロナの感染が拡大する前から準備を始め、私でないとできない商材をと考え、地元の焼きカレーを選びました」

 家事は夫と分担しながら仕事と両立している。当初の売り上げ目標に達していない日も少なくないが、なんとか黒字経営を維持。現在、平日の週4日で運営。買い出しから仕込み、移動、開店、片付けをひとりでこなしている。大変な分、お客とのやりとりなど、日々やりがいを感じているという。

「今はリモートワーク中の方が多いですが、出店する曜日にわざわざ出社して、買ってくださるお客さんがいたり、おいしかったよという感想を聞けるのがとても励みになっています」

 商品の魅力が伝わるように、店頭にモニターとカメラを置いて、石窯で焼いている様子をリアルタイムで見られるように工夫している。

 フードトラック支援のベンチャー企業「Mellow」広報の小関真裕美さんによると、フードトラックの登録台数は1100台とコロナ禍で大幅増。今後、アプリ上で予約販売ができる仕組みをつくるなど、売り上げの最大化を支援していくと話す。

 コロナ禍で飲食業は打撃を受けているが、フードトラックで食の魅力を伝えたいという経営者が奮闘している。

「日本橋せいとう」城麻里奈さん

 創業74年の老舗も、フードトラックの運営を1月に開始した。熟成和牛で知られる「日本橋せいとう」は、経営する2店舗(日本橋、青山)で打撃を受けた。

「昨年、今年と緊急事態宣言でそれぞれ2カ月間休業しました。営業を再開しても、外出自粛や時短営業でお客さんが戻る気配がありませんでした。夜の接待利用が多かったため、ディナータイムはお客さんがゼロの日が続いたりと、大変でした」

 こう話すのは、3代目オーナーの城麻里奈さん。だが、コロナによるプラスの作用もあったという。

「新型コロナが収束しても再びパンデミックが起こらないとも限りません。これからはお店という箱だけに頼るのではなく、こちらからお客さまのところに出向いたりと、積極的な展開をしています。これまで行っていなかった通販のほかに、フードトラックでのお弁当の販売もそのひとつです」

 開始当初はノウハウがなく、なかなか売り上げがたたなかったが、試行錯誤の末、今では熟成和牛のハンバーグ弁当のほか、シチューやポトフなどが評判に。店舗が苦境に陥る中、新たな展開に奮闘している従業員のおかげで、組織の結束が強くなったと話す。

「今後はトラックの台数を増やすとともに、お客さまに喜んでいただけるサービスを新たに展開していきたいです」

「mahana」中野小百合さん

 平日は銀座、大手町といった東京都心で、夫の智博さんとフードトラック「mahana」を営業している中野小百合さん。ショウガごはんの上に、味付けされた豚肉や鶏肉と、たっぷりの野菜がのった6種類の弁当を販売。

 中野さんは昨年末まで丸の内で弁護士秘書として勤務。飲食店経営の経験はなかった。美容メーカー勤務の智博さんと昨年2月に再婚。ナチュラルフードコーディネーターの資格を生かし、リモートワーク中にこの商売を始める決断をした。

「私自身が会社員時代、ランチで野菜だけでなくお肉もしっかりとれる健康的な飲食店やお弁当が少ないと感じていました。自分の家族にも安心して食べてもらえるものを提供したいという思いが強くなりました」

 脳の手術で左目の視力が著しく低下したのもデスクワークを辞めるきっかけに。昨年、海外渡航ができなかったため、かなわなかった新婚旅行の資金などを元手に、専用トラックや調理機材を購入。退職後、営業を開始した。

「始めて4カ月余りで、休みなく営業していますが、おかげさまで頻繁に買いに来てくださるお客さまも増えました」

 お客の7割ほどは女性だが、野菜の増量を注文する年配の男性サラリーマンの姿も。当初思い描いていた弁当が受け入れられていると手応えを感じている。販売エリアや天候に左右されるが、現在、1日平均80~85食を売り上げる。

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