著者のコラム一覧
重道武司経済ジャーナリスト

1957年鳥取県倉吉市生まれ。84年フジサンケイグループ傘下の経済紙「日本工業新聞」(現フジサンケイビジネスアイ)の記者となり、千葉支局を振出しに鉄鋼、自動車、総合電機、財界、金融、エネルギー(電力・石油・ガス)などの業界を担当。2000年外資系通信社に転じた後、02年からフリーに。得意分野は通信社時代を含めて在籍足掛け7年にも及んだ日銀記者クラブ時代に人脈を培った金融。自動車業界にも強い。

ヤマハ発動機は過去最高の業績なのに…日髙祥博社長「辞任」の衝撃と波紋

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 超克するには乗り越えるべき壁があまりに厚かったということか。ヤマハ発動機(ヤマ発)の日髙祥博社長が9月末、辞任した。後任は渡部克明会長が兼務する。

 日髙氏は同16日午前3時ごろ、静岡県磐田市の自宅で就寝中、同居する娘に包丁で切り付けられ、長さ15センチの創傷を負った。キズの程度は「軽傷」とされているが、肉体的な損傷より事件が本人はもとより、それを目撃したであろう家族に与えた精神的衝撃の深さはいかばかりだったろう。想像を絶する。このためまずは「家族のケアに専念したい」として、トップのイスをなげうつ決断に踏み切ったという。

 これに対してSNS上などでは「最善の選択」などとしておおむね好意的な受け止めが広がる。市場の動揺も今のところ見られない。むしろ辞任発表後のヤマ発の株価は上昇気味だ。殺人未遂容疑で逮捕された娘も10月4日には静岡地検が不起訴処分を決定。家族のもとに帰された。理由は開示されていないものの、日髙氏らによる「尽力」が功を奏したとも言われる。

 それにしても「辞任」とは異例の決断だが、それを後押ししたであろうとみられているのが、足元におけるヤマ発の業績の好調ぶりだ。2023年12月期は売上高2.41兆円、営業利益2506億円といずれも過去最高を更新。今12月期も売上高2.6兆円、営業利益2600億円と増収増益が「ほぼ確実」(市場関係者)な見通し。4期連続で史上最高を塗り替える。

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