「弘兼流60歳からの手ぶら人生」弘兼憲史著
60歳を越えたとき、人生の貴重な残り時間をどうしたら悔いなく生きられるか。そう考えた著者は、惰性で行ってきた習慣や、なんとなく所有していた持ち物を手放すことを試みた。若い頃に録画したVHSのビデオカセットテープ、流行はずれのスーツ、名刺、本、年賀状や中元・歳暮の習慣など、自分に絡みついているすべてを吟味し、不必要なものは捨てて、できるだけ身軽に生きていく。本書は、そんな弘兼流の人生後半戦の棚卸し法を紹介している。
吟味の対象になるのは、物理的なものだけではない。家族や友人らの人間関係や仕事の仕方、お金との付き合い方、家事を含めた日々の生活術にまで及ぶ。断捨離やミニマリストのように減らすことのみを重視するのではなく、身の丈に合わなくなった物事や人間関係から自由になったかわりに、今の自分に合った生活をスタートさせることも提案。人に囲まれる生活に流されずに自分ひとりを楽しむ方法を身につけ、家族を決して縛らず縛られず適度な距離感を持つなど、老いを成長のひとつとして新しい生活にシフトしていく前向きさが、なんともすがすがしい。(海竜社 1000円+税)