サナは恋人を連れてグループホームにいる認知症の母に面会に行った帰り道、高架下でホームレスに出会った。恋人が「あんなところに寝るなんて、僕には理解できないし、ありえないよ」と言うと、サナは「……わたしは昔、ホームレスの人たちと並んで、駅前に寝ていたことがあるわ」と言った。サナの父は時折出版社からもらう仕事をするだけで、家計は看護師の母が支えていた。生活苦で母は疲れきっていて、サナを包丁で刺そうとしたこともあった。
ある日、サナと妹は、父を家に置きざりにして、母に連れられて野宿の旅に出た。
貧困と虐待の中で育った著者の自伝的ノンフィクションノベル。(晶文社 1600円+税)