パニック障害で女優生命の危機だった田中美里
そんな病気があるとは知らず、結果を聞いた田中は「え、何のこと?」と戸惑ったという。しかも「いつ入院しますか」と尋ねる医者に、「仕事が入っているので調整します」と答えた。だが、医者は「どこかで休養しないと女優生命が終わってしまいますよ」と事態の深刻さを告げ、驚いて入院した。
しかし、個室で面会謝絶にもかかわらず、点滴をやってくれる看護師にも恐怖を感じるようになり、5日で入院を切り上げ、自宅療養に切り替えた。
しばらくの間、日常の当たり前のことができなくなるなど病状は好転しなかった。事務所が連絡を取ろうとしても田中にはつながらない。翌年1月に主演が予定されていた単発ドラマもすべてキャンセル。まさに「女優生命の危機」。
救ったのは信頼できる兄との同居、さらに映画「みすゞ」の五十嵐匠監督だった。監督は田中に「あなたしかいないのだから、あせらずに」と手紙を送り、回復を待っていたという。映画のスタッフの励ましもあり、3月には徐々に体調も回復していった。
「みすゞ」は震災の際に流れた、ACジャパンの差し替えCM「こだまでしょうか」でも知られる詩人、金子みすゞの生涯を描いた映画。田中は「私なんかが演じていいんだろうか」とプレッシャーを感じたというが、みすゞの長女は田中と会った時に詩の一節を引用して、「“みんなちがってみんないい”そんなみすゞも居るんじゃないですか」と励ました。