剛速球からほっこりしたスローカーブへ 「ごちそうさん」が快進撃
NHK朝ドラ「ごちそうさん」、大健闘である。前作「あまちゃん」が国民的ドラマと呼ばれるほどに大化けしたので、後任としてのプレッシャーは相当強かったはずだ。
しかし、蓋を開けてみれば週間視聴率は20%半ばをキープし、スタートから4週連続首位と絶好調だ。その理由は何なのか。まずはヒロイン・め以子(杏)の人物像だ。子どもの頃から食べることに関しては飛びぬけているが、それ以外は「おいおい、大丈夫か?」と思ってしまうくらい普通の女性。どこにでもいそうだからこそ視聴者は親近感を覚え、構えずに見ることができる。
次に料理の魅力だ。朝ドラは朝食の時間であり、ご飯を食べるシーンが多いドラマは、見るだけで満腹になるのがうっとうしい。だが、そんな心配も不要だった。料理がうまそうなだけでなく、とにかく美しいのだ。だから“胃もたれ感”もない。これはフードスタイリスト・飯島奈美の手腕だろう。「かもめ食堂」などの映画や、東京ガスのCMなど、料理が重要な役割を果たす映像作品で頼りにされるのも当然だ。
そして何より、ドラマ全体が丁寧に、ゆったりと作られていることが大きい。「あまちゃん」が剛速球だったとすれば、「ごちそうさん」はほっこりしたスローカーブだ。今週から突入した大阪編で、そこにエグ味が加わるのも期待大である。
(上智大教授・碓井広義=メディア論)