「フィルス」アーヴィン・ウェルシュ(原作・製作総指揮)
「作者が同じですから、そう思われるのかも知れませんけど、違います。マークはドラッグ中毒の仲間がいるチームプレーヤー。一方のブルースは組織も上司も部下も大嫌いで、孤立していくタイプ。マークを捕まえる側です。自分が這い上がるためなら裏工作に不正申告もお手のもの、同僚さえおとしめる姿は、イカれ具合がマークより際立っていて、『トレスポ』よりもこの『フィルス』の方が映画向きだと思ってました」
――出口の見えない不況に増税ラッシュの中、イカれそうになりながら頑張る中高年男へひと言。
「ブルースの二の舞いにならないように、ということですね。最後、彼なりに折り合いをつけますが、彼は何かしなければならないと思うあまり、あの手この手と動いた結果、ことごとく裏目に出て、かえって泥沼に落ち込んでいきます。自分が病んでいて、壊れていくことを自覚しながらも、冷静さを欠いてしまっているんですね。時には何もしないことも必要ということでしょう。本当にイヤなヤツとして登場しますが、実はダークなラブストーリーなんです。ブルースと一緒に、心が波打つジェットコースターのような、感情の旅路を楽しんでいただきたいです」