弁護士志望が芝居の道へ 愛川欽也を変えた「新劇界の巨人」
浦和高校時代に芝居に巡り合ってから、六十数年。愛川欽也さん(79)は数年前に自前の劇場「キンケロ・シアター」をつくり、つい最近も幻のトーク番組「パックインジャーナル」を、自身が運営するネットTVで復活させるなど表現への情熱は衰えを知らない。その裏には「日本新劇界の巨人」の教えがあった。
浦和高校入学時の愛川の目標は「東大法学部を出て弁護士に」だった。ところが通学路途中にあった「北浦和映画劇場」がその後の運命を大きく変えた。
「ちょうど開館したてだったのかな、花輪がズラーッと並んでてね、“面白そうだな”と思って入っちゃったんだよ。そこで見たフランス映画にハマっちゃってね、“よし、俺も芝居をやろう”って。調べたら『俳優座養成所』ってのが生徒募集してたから、ウッカリ受けたら合格しちゃったんだ」
そこで出会ったのが新劇界の巨人・千田是也だった。愛川、高校2年生の時である。
「『養成所』っていうから芝居の稽古をするのかと思ったら、ほとんど学校と一緒でね、朝から夕方までビッチリ授業。そこで先生も授業を持ってらした。ご自身が書いた『近代俳優術』を教科書に使ってね。当時、先生は毎年何本もの映画に出ていて超多忙だったのに、休講したことは一度もなかったね」