「不良番長」内藤誠監督が語る俳優・梅宮辰夫との濃密な現場

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 ネオン街のことはいろいろ教わりましたよ。ただ、払いはいつも辰ちゃん。社員監督とスター俳優では、稼ぎが違いますからね。

「仁義なき戦い」シリーズが始まると、辰ちゃんは山城新伍、安岡力也たちとともに京都に行ってしまい、僕は東京で新人女優を見つけて、「番格ロック」などのスケバンものを撮るようになった。

 高いギャラの辰ちゃんがちょっと遠い存在になってしまいましたけど、東映を離れて「時の娘」(80年)を撮るときも出てくれて、前作の「明日泣く」(11年)なんて「そんなギャラだったら、いらないよ」と無料出演してくれました。

 その恩返しというわけで、何年か前、釣り師でもある辰ちゃん主演で「老人と海」を撮ろうと言ったことがあるんです。いしいしんじ作品にヒントを得て、「幻の魚シーラカンスを釣る映画にしよう」と向けたら、「シーラカンスはどうするんだ」って。「CGでどうにかなる」と答えたら、「釣りだけは本物でなきゃ話にならん」ですって。

 彼は文学でいえば、私小説の人です。スターだと素顔を隠すのに、平然と丸出しで仕事している。先日、NHKで自分の一家の歴史を見たときも、心から泣いていた。会うといつもホッとするし、彼と出会え、一緒に仕事できて、本当に幸せです。

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