俳優・宝田明氏 「反戦がテーマのゴジラを国会で上映したい」
■いまでもロシアに吐き気覚える理由
こうした発言が重みを持つのは、宝田自身、命を落としかけた体験があるからだ。
「略奪にきたソ連兵に、頬に銃口を突きつけられたときの冷たさ。真の恐怖を前にすると歯がガタガタ震えて止められないんです。兵隊だった兄の姿を求めて列車を迎えに飛び出したときには腹を撃たれました。彼らは民間人の子供である私をダムダム弾(激しい肉体損傷を伴う非人道的弾丸で、ハーグ陸戦協定で使用を禁じられていた)で撃ったのです。ロシアには素晴らしい文豪や作曲家、映画があるのに、この体験のせいで今見ても吐き気がしてしまう。戦争が憎悪しか生まないというのは、こういうことです」
偶然、元軍医が近くにいなかったら、主演を務めた「ゴジラ」も誕生しなかったかもしれないのである。
「反核や反戦のテーマをこめた初代『ゴジラ』は米国にとって都合が悪く、大幅にカットしなければアチラで上映できなかった。今、アメリカの戦争に加担はしないとハッキリ言い返せない議員たちのため国会議事堂で上映して“61年も前に日本人はこれほどのものを作ったんだぞ”と言ってやりたいね」
外地から命からがらの悲惨な引き揚げを体験し、「人間の起こす最も大きな罪は戦争です」と語る宝田の言葉を、日本人は今こそ噛み締めるべきだ。