若年性認知症(3)65歳以上の発症と比べて症状の進行が速い傾向
若年性認知症を続けて取り上げて、今回で3回目。引き続き、定年まで働くために知っておきたいことを紹介します。
認知症の治療は、薬物と非薬物の両輪で行います。一方に頼り切るより、両方の特性を生かした方が、認知症の進行を遅らせることができます。
薬物では、昨年、一昨年と認可された新薬、ケサンラ(一般名ドナネマブ)、レケンビ(レカネマブ)。さらに、以前からあったアリセプト(ドネペジル)、レミニール(ガランタミン)、イクセロンパッチ・リバスタッチパッチ(リバスチグミン)、メマリー(メマンチン)を用います。
古い薬にはジェネリックもあるので、アリセプトやレミニールなどは、一般名(ドネペジルやガランタミンなど)を商品名に用いた後発品が出ています。さらに、ドネペジルの貼付剤であるアリドネパッチも利用可能です。
最近の研究では、「レケンビとアリセプト」といったように新薬と従来薬を併用することで、認知機能の維持がさらに向上できる可能性があることもわかってきています。
ただ、そのためには早期診断が重要です。新薬を使える条件に、「認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と、認知症の軽度であること」が入っているからです。
若年性認知症は、65歳以上の認知症に比べて比較的進行が速い傾向があります。これは、がんを発症した場合、若い人の方が高齢者よりも進行が速い傾向があるのと同様です。新薬を使えるチャンスを逃さないために、これまで考えられなかったような物忘れが増えたと感じたら、医療機関を早めに受診すべきです。
軽度認知障害や、その前の段階であるSCD(主観的認知機能低下)では、物忘れが生活や仕事に支障を来すほどではありません。MCIは周囲の人が物忘れにやや気づく程度、SCDにおいては周囲が気づくレベルではありません。ただ、本人は「何かおかしい」と感じている。
認知症と診断されても打つ手がなかった時代と異なり、今は打つ手があるわけです。認知症を発症していた場合、今あるベストの治療を受けるためにも、自分の「何かおかしい」に目を向けるようにしてください。