「もう話すことないよ。京都の撮影に行かせて――」と駄々っ子のように地べたに座り込むこともあった。演技ではない。すべて自然体。こうした一連の言動が、不倫にもかかわらず好感度を上げていた。
ある女優と喫茶店で喧嘩になったことがあった。火野は突然、人目もはばからず泣き出した。まるでドラマのワンシーン。これも自然体。母性本能をくすぐる典型的なタイプ。女性が惚れるケースが大半だったのもわかる。別れた女性は火野を恨むことはない。人間味あふれる人柄が今の自転車の旅につながっている。散歩は人選で善し悪しが決まる。
(ジャーナリスト・二田一比古)