TBS「ナポレオンの村」は唐沢寿明の緩急自在の芝居が冴える
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
今年初めに放送されたドラマ「限界集落株式会社」(NHK)。過疎の村に現れた経営コンサルタント(谷原章介)が、村人たちに「農業はやり方次第で儲かる」と説き、さまざまなアイデアを実践していく物語だった。一方、こちらは限界集落を抱える地方自治体に赴任した公務員(唐沢寿明=写真)が主人公だ。効率優先の市長(沢村一樹)が廃村扱いするこの村を、柔軟な発想と抜群の実行力で崖っぷちから救おうと奮闘している。
このドラマの見どころは、唐沢が演じる“スーパー公務員”が何を企画し、いかに達成するかだ。2回目には、村で作られた米を、ローマ法王に献上して食べてもらうという驚きの仕掛けが登場した。しかも、このエピソードは、原作本「ローマ法王に米を食べさせた男」のタイトルにもなっている実話なのだ。
著者の高野誠鮮氏は、構成作家などを経て、故郷の石川県羽咋市に寺の後継ぎとして戻り、同時に市役所の臨時職員になったという異能の人物だ。超がつくほど前向き。いつの間にか周囲を巻き込んでいく求心力。いい意味で公務員の既成概念から大きくはみ出た主人公を、唐沢はアッケラカンと明るく、また緩急自在の芝居で見せている。
ただ一点、「ナポレオンの村」という、ミスリード的なタイトルで損をしているのが残念だ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)