女優・岩崎ひろみ 大先輩の朝丘雪路に教わった「挨拶の所作」
ほかにも、「畳のヘリは踏んじゃダメなのよ」「着物の袷と同じで、手を組む時は左手が上」「扇子の持ち上げ方ってお箸の持ち方にも通じるのよ。まず右手で持ち、左手を添えて右手で持つ」……小さな所作なんですけど、今でも鮮明に覚えています。
挨拶の仕方も勉強になりました。楽屋でお化粧をされてる時に、誰かがご挨拶に来られると、わざわざお化粧の筆をおいて向きを変え、必ず目を見てご挨拶される。それは新人が来られても同じだったのです。
舞台の時、そうめんをいただくにも、においが相手に失礼なので、薬味のネギを使わないとか。普通は「ごめんなさいね。おネギを入れたの」で済むのかもしれませんが、それをしないで相手のことを考える。なかなかできないことですね。
時代劇を演じる時、若い役者さんには「所作指導」が必要ですが、私はありがたいことにやらなくてよかった。着物を着て記者会見をする時は左手を上にとか、無意識のうちにできているのは、やはり朝丘さんに教わっていたからです。
お会いしてから間もなく、朝丘さんの日舞教室にも通うようになりました。そこでもそれこそ手取り足取り教えていただきました。物心ついた頃から日舞を習っておられただけあって、朝丘さんのしぐさ、立ち居振る舞いはとってもきれいで理にかなっていました。