又吉「火花」ネット配信優先でTVと映画の“常識”どうなる?
コラム【エンタメ最前線】
動画配信世界最大手の米ネットフリックスが日本のテレビ局を揺さぶっている。芥川賞受賞で話題の又吉直樹「火花」のドラマをテレビにさきがけてネット配信するというのである。
芥川賞や直木賞を受賞するような小説のドラマ化はこれまでならテレビ局が担うのが普通。しかし、今回は又吉が所属する吉本興業がネットフリックスの出資を仰ぎながらドラマを制作し、ネット配信を優先する。
吉本=ネットフリックス側は全10話ほどの配信が終了したあと、テレビにドラマの権利を売ろうというわけで、テレビ局もなめられたものだ。そこでネット配信後にテレビ局が放送するのかどうかも注目されている。
「火花」の映画化にも関心が集まっている。ここでも、ネットフリックスが製作に出資する話が浮上。すでに大物映画監督に打診がいっているらしいが、ネットフリックスが製作に関与し始めるとなると、劇場公開を担当する配給会社の立場も微妙になってくる。
ドラマや映画は、これまでテレビ局や映画会社が主体になって作られてきた。テレビ局がドラマを制作し、放送後にその映画化作品が作られ劇場公開となるのだが、動画配信会社が製作の関与を強めると、これまで常識的だった放送や公開の順番がややこしくなる。
要するに、テレビ局と映画会社は放映や公開の仕方に関して役割分担ができていた。その“仕組み”が崩壊するわけだ。スマホで多くのドラマや映画がいち早く見られる時代がやってくるかもしれない。
(映画ジャーナリスト・大高宏雄)