「孤独のグルメ」進化あり 目立たず確実に“ドラマ度”高まる
【連載コラム TV見るべきものは!!】
「孤独のグルメ」(テレビ東京系)の初登場は3年前。この秋、堂々の第5シリーズである。しかも、これまでの深夜バラエティー枠から、「ドラマ24」というブランド枠へと移行した。いわば“看板ドラマ”として認知されたことになる。
とはいえ、主人公の井之頭五郎(松重豊は完全に一体化)自身に大きな変化はない。例によって、仕事で訪れた町の大衆的な店で、ひたすら胃袋を満たすのみだ。その潔さがファンにはたまらない。
それでいて、新シリーズに全く手が加わっていないかといえばウソになる。例えば先週の「千葉県いすみ市大原」編。五郎が港で伊勢エビを見かける。今回は「千葉で伊勢エビ?」という意外性できたかと思いきや、それはフェイント。結局、飛び込んだ食堂で食べたのは「ブタ肉塩焼きライスとミックスフライ」である。このいすみ産のブタ肉、厚切りの塩焼きが何ともうまそうで――。
また食堂に至る過程で出会う、市役所職員(塚地武雅)とのやりとりもおかしい。どこから見ても地元民という風貌にもかかわらず、東京からの移住者だという。「都会っぽさが抜けなくて」のセリフに、五郎が口には出さず「抜けてます、抜けてます」とつぶやくのだ。塚地も朝ドラ「まれ」以上のハマリ役だった。
目立たぬよう、しかし確実に“ドラマ度”を高めた今シーズン。まだ見てないなら、お急ぎを。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)