妖気漂わせ 水木しげるさんが語っていた後世へのメッセージ
「そんなときでも、『私は私だ』と開き直っていました。人は少々メシが食えなくなっても死なないものです。軍隊の野戦でも食えないことはしょっちゅうでしたが、腹が減っても、人はなかなか死ぬことはできないものです」
左腕を失った戦争体験を繰り返し話すときは、かみしめるように語っていた。
「けんかはよせ、腹がへるぞ」――これは、漫画「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する“ビビビのねずみ男”のセリフだが、水木さんの言葉はねずみ男のようにひょうひょうとしながらも、鬼太郎のように的を射る。戦争体験に基づく反戦作品も多い水木さんにしか醸し出せない特異なオーラをまとったインタビューだった。
アベノミクスのせいで日本経済が引っかき回され、負担増の庶民は青息吐息。そんな時代が来ることを“妖力”で予見していたのか。
「生きていればやり直すことはできる」。水木さんの言葉は今こそ心に響く。
合掌――。