あえて夢物語に浸る 新垣結衣ドラマ「逃げ恥」の楽しみ方
夏の不出来を挽回するかのように、10月期クールのドラマは各局ともに力作が多い。なかでも、ガッキーこと新垣結衣(28)主演の「逃げるは恥だが役に立つ」(火曜22時、TBS系)は、一見の価値アリだ。
早くもエンディングの軽快なダンスが話題となり、ユーチューブの振り付け動画は再生回数390万超と注目を集めているが、それ以上に本編もノリがよく、「情熱大陸」をパロディーにしたシーンひとつとってもクスリと笑える内容になっているのだ。
主人公は院卒にして内定ゼロの25歳女性。突然の派遣切りに遭い、特技(掃除)を生かした家事手伝いのバイトにいそしむ中で新たな“就職先”として専業主婦になることを思いつき、ITオタクの年上サラリーマン(星野源)と契約結婚するというストーリー……とまあ、非現実的でツッコミを入れたくなるような設定だが、コラムニストの桧山珠美氏は「まさに夢物語を楽しむドラマ。登場人物は誰ひとりとして悪者がおらず、5分先の展開が読めるような話ですが、それが心地よく、ありがたい」とこう続ける。
「ガッキー演じる高学歴女子は妄想癖はあるものの、高飛車キャラでもなければ、自らの不遇を声高に他人や社会のせいにすることのない性格のいい子ちゃん。中年になっても異様に仲のいい両親(宇梶剛士、富田靖子)に育てられたのもうなずけるし、石原さとみと並んで若手コメディエンヌの双璧ともいえるガッキーの持ち味が存分に生きた役といえるでしょう。そんな彼女の相手役である星野源はシンガー・ソングライターで若者からの支持率が高く、石田ゆり子やディーン・フジオカに続く“海外逆輸入俳優”の新顔(大谷亮平)を起用することで、30代以上の視聴者層も取り込めるキャスティングを配したのもうまい。これみよがしに難解な謎解きを強いるようなドラマが多い中で、単純に、ガッキーのような娘が周囲にいたらいいなと見る者の気持ちをほんわかとしてくれる。1時間という尺の間だけは現実を離れて幸せな気分になれる、そんな顧客満足度の高いドラマのような気がします」
初回(11日)視聴率は10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まずまずの出だし。ガッキーに癒やされる中年が続出か。