桂あやめさん 西川死刑囚に襲われた衝撃体験を振り返る
「女性を4人も殺した殺人犯だと分かったとたん、また震えが起こりましたね」
事件は翌日の新聞の1面に大きく掲載され、殺された4人の女性の写真の横に花枝の写真があったのを見て、改めて生きていることに感謝した。師匠の文枝が吉本興業所属なので花枝も所属している。吉本のお膳立てで記者会見が開かれた。首の周りに痣が残っていて痛々しかったが、そこは落語家だ。「これまで吉本の芸人の記者会見といえば、たいてい加害者だったのが、被害者としての会見は初めてだとマネジャーに言われました」とギャグをかまして、報道陣を笑わせた。
記者に「よく助かりましたね」と言われたので、「首を左右に動かす落語の稽古で筋肉が鍛えられたおかげで助かった」と答えた。実は冗談でなく、診察した医者に「もうちょっと首が細かったら危なかった」と言われた事実がある。
花枝は高座でも事件の体験談をまくらでしゃべって大いに笑わせた。
「大阪人は嫌なこと、困ったこと、悩みごとがあったら、自分からネタにして笑い飛ばす。それが一番の解決法なんです。私も笑いにすることで『自分は元気なんだ』とアピールしたかった。同情は嫌、被害に遭った可哀想な人でいたくない。演歌歌手なら泣き落としでいいでしょう。『首を絞められました。殺されそうになりました。でも生きてます。聞いてください。桂花枝さんの新曲です』なんてね。でも落語家はそうもいかない。お客を笑わすのが職業なんですから」