17年ドラマ総括 TBS復活と昼ドラ「やすらぎの郷」の革命
第1の見どころは、浅丘ルリ子、加賀まりこ、八千草薫といった大女優たちが見せる、ノスタルジーに満ちた虚実皮膜の人間模様だった。次に、長い間この国と芸能界を見続けてきた倉本が、物語の中に仕込んだ鋭い社会批評である。それは介護問題からテレビ局の視聴率至上主義、さらに禁煙ファシズムの風潮にまで及んでおり、それらがスリリングにして痛快だった。舞台は現代だが、描かれた世界観はまさに昭和である。
「やすらぎの郷」と同時期に放送されたのが、NHK朝ドラ「ひよっこ」だ。ヒロインは、高校卒業後に東京で働き始める谷田部みね子(有村架純)。架空の人物であるみね子は何者でもないかもしれないが、家族や故郷、そして友達を大切に思いながら懸命に、そして明るく生きていた。いわば等身大のヒロインであり、だからこそ見る側は応援したくなった。
暮らしも社会も緩やかだった昭和30年代。経済大国へとこの国が変貌していく40年代。その境目、東京オリンピックが開催された昭和39年から物語を始めたことで、私たちが何を得て、何を失ってきたのかを感じさせてくれたのだ。