19歳で芥川賞も…綿矢りさが語った栄光と挫折と今と過去
2012年には「かわいそうだね?」で大江健三郎賞を受賞。14年に2歳年下の一般男性と結婚、15年に第1子を出産した。
「子供が生まれる前は、書く前に“助走の時間”があって、爪を磨いたり、ノートに絵を描いたりして気分が乗ったら執筆してました。今は子供中心の生活なので、時間があったらすぐ書く。子育てを執筆の気分転換と捉えています。小説のメモを携帯に書き残そうとすると、子供が携帯を取ったり、積み木をぶつけたりしてくるので、ひどくなった場合はメモを取るのをあきらめます。忘れてしまう程度の話だったら、もういいかなって(笑い)」
人生で影響を受けた小説家の一人が太宰治だ。
「太宰の『人間失格』は本当に好きな作品なんですけど、<いっさいはただ過ぎ行くのみ>みたいな価値観だと長生きしづらいですよね。今は業田良家さんの『自虐の詩』のように、幸や不幸といったカテゴリーを超えて生きたことに意味がある、という価値観に支えられていますね。嫌なことにも意味があるし、不幸なことを避けて通れるわけではないなあって。太宰は家庭が幸福で小説が書けるわけない、というスタンスだったので、私はどうしたらいいのかわかりません(笑い)。30代で結婚して子供ができて、今がすごく幸せなので、小説を書きながら長生きしたいですね」
▽わたや・りさ 1984年、京都府生まれ。2001年「インストール」で文藝賞を受賞し、デビュー。早稲田大学在学中の04年に「蹴りたい背中」で第130回芥川賞を受賞。「かわいそうだね?」「夢を与える」「勝手にふるえてろ」「憤死」など著書多数。