「黒井戸殺し」違和感も ドラマ化が難しいクリスティ小説
14日に放送されたドラマ「黒井戸殺し」(フジテレビ系)の原作は、アガサ・クリスティの長編小説「アクロイド殺し」だ。
のどかな郊外の村で富豪のアクロイド氏が殺害される。彼の姪が助けを求めたのが、引退してこの村で暮らす名探偵ポアロだ。使われたトリックが衝撃的で、1926年の発表当時、「フェアか、アンフェアか」という論争が起きたほどの作品である。
三谷幸喜(写真)の脚本はポアロを勝呂(野村萬斎)、語り手のシェパード医師を柴医師(大泉洋)としながら、「ポアロ物」としての基本は外していない。また「全員が容疑者」という前提で構成されており、ネタばれも心配せずに楽しめた。
ただ気になったことが2点ある。1つは野村萬斎のややオーバーな演技。ポアロと勝呂は別人格かもしれないが、話し方や表情を少し抑えたほうがよかったのではないか。
もう1点は容疑者のひとり「復員兵の男」だ。このドラマの設定は昭和27年であり、さすがに兵隊服姿の復員兵が町を歩いている時代ではない。
3月末にテレビ朝日系でも同じクリスティ原作の「パディントン発4時50分」と「大女優殺人事件~鏡は横にひび割れて~」が流された。しかし、どちらも「ミス・マープル」という主人公自体を大幅に変更したため、かなりの違和感があった。クリスティの小説は確かに面白いが、ドラマ化は意外と難しい。