著者のコラム一覧
中川右介

1960年東京生まれ、早大第二文学部卒業。出版社「アルファベータ」代表取締役編集長を経て、歴史に新しい光をあてる独自の執筆スタイルでクラシック音楽、歌舞伎、映画など幅広い分野で執筆活動を行っている。近著は「月9 101のラブストーリー」(幻冬舎新書)、「SMAPと平成」(朝日新書)など。

「百万本のバラ」は激動の時代に複雑な生い立ちを持つ曲

公開日: 更新日:

「百万本のバラ」のロシア語の原詞から日本語訳を作ると、85年のコンサートでギターの弾き語りで歌ってみた。すると以後、コンサート会場にバラの花束が届けられるようになった。そこでレコーディングして発売する。88年に加藤はニューヨークのカーネギーホールでコンサートを開き、この曲を歌うと、それがニュースとして日本に伝わった。ベルリンの壁崩壊からソ連崩壊という激動の中で、この歌は広がっていく。歴史が仕掛け人となってヒットさせたのだ。

 原曲の作曲者パウルスはラトビアの独立運動の担い手で、ソ連崩壊後、ラトビア新政府の大臣になった。来日した際に加藤は面談し、その時初めてもとは違う歌詞だったことを知り、後にラトビアへ行き作詞者ブリエディスとも会った。彼は70年にラトビア独立を願って焼身自殺した人に詩を捧げたため幽閉された過去を持つ。

 画家と女優のロマンスの物語と思われた曲の背景には、自由を求める人々の思いが込められていた。しかも、3人が不遇だった時代の68年は、加藤登紀子が初めてソ連ツアーをした年でもあった。何かがつながっているのだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議