長男に誰の弟子になりたいか聞くと「円楽師匠のところ」と
好楽の長男、一夫は子供の頃、落語が嫌いだったという。興味を示さないし聞こうともしない。それが駒沢大学2年生の頃、父親が集めた落語のテープを聞き始め、たちまちとりことなった。
「大学4年生の時、『落語家になりたい』と言い出したんです。とにかく卒業してからの話だと、卒業まで待たせました」
卒業後、たいていの落語家ならすぐ自分の弟子にするところだろうが、好楽は違った。
「いきなり芸人になったって、世間の風当たりを知らないからダメだよ、と言いました。社会に出て1年間働いてこいと。次女が雑司が谷でたい焼きとおはぎの店をやってて、松坂屋上野店のデパ地下にも出店してたんで、そこで働かせました。おばちゃんたちの接客してるうち、少しは世間を知ったようです」
1年後、「落語家になっていいですか」と許可を求められた。
「いいけど、俺の弟子にはしないよと。他人の飯を食ったほうがいいという考えでしたから。それで、『誰の弟子になりたい?』と聞いたら、『円楽師匠のところに行きたいです』と言うじゃないですか。我がせがれながら、いい度胸だと思いました。それで、『いいよ。俺の知り合いだから紹介してやる』って、師匠に頼んだんです。最初は『自分の弟子にすればいいだろう』としぶってましたが、せがれの意思なんで、あきらめずに頼みました」