芥川賞ノミネート 3度目の正直狙う松尾スズキの下馬評は?
個性派俳優としても活躍する松尾スズキ(55)の小説「もう『はい』としか言えない」(「文学界」3月号=文芸春秋)が、第159回芥川龍之介賞の候補作に選ばれた。「クワイエットルームにようこそ」(05年下半期)、「老人賭博」(09年下半期)に続くノミネートだけに三度目の正直といきたいところだろう。
松尾は役者や作家としての肩書以外に、映画監督で脚本家で劇作家で演出家でもあるマルチな才能の持ち主だ。私生活では4年前に20歳以上年下の一般女性と再婚した夢のような中年ライフを送っている。今作の主人公は著者同様、離婚歴のある元役者のシナリオライター。前半部分では、再婚した妻に浮気がバレて1時間おきに自撮りの写メと毎日のセックスを欠かさないペナルティーが科せられるというエピソードが切実に描かれている。「これは実話か?」などと物語の展開とは別の楽しみ方もできるわけだが、肝心の賞レースはどうなのか。
■本命は新川優愛似の美女
ノミネートされた全5作品中、下馬評で抜きんでているのは、「群像」6月号(講談社)に掲載された北条裕子(32)の「美しい顔」だ。群像新人文学賞当選作で芥川賞は初ノミネート。3・11で被災し、母親を失った17歳の少女の過酷な体験がまるでドキュメンタリーのように描かれている。