「メジャーという感覚に慣れないのは大学時代に培われた」
早稲田大学演劇倶楽部(通称エンクラ)の先輩で劇団「カムカムミニキーナ」の旗揚げメンバーのひとり、八嶋智人(47)らとの出会いは、俳優の礎を築くにあたって大きな影響を与えた。
「八嶋さんは、2浪して大学に入った僕と年齢は3歳差ですが、大学では5期上の先輩でいろいろと面倒を見てもらいました。高校生時代にカムカムの舞台に足しげく通ってアンケートシートを書きまくっていたとき、八嶋さんはアンケート管理も担当していたんです。それで小手という名字も珍しかったんで覚えていてくれたんですね。アンケート用紙にびっしりと感想を書いてた“例のアイツ”が入ってきたと(笑い)。でもやはり、好き過ぎてというか、結局入団は遠慮してしまいました。もしカムカムに入ってたら違う未来があったのかな」
映画「夢売るふたり」やNHK朝ドラ「あまちゃん」の自意識過剰な観光協会職員役で注目された個性派女優・安藤玉恵(顔写真)はエンクラの後輩だ。
「エンクラでは、新入生が入ると3年生の中から新人担当が選出されて、半年間、基礎訓練などの指導に当たるんですが、そのときの安藤たちの新人担当が僕だったんです。でも、気が付いたら有名な映画だのドラマだのに出る女優になっていた。学生のころから肝が据わっているとは思っていたんですが、僕がトロトロやってるうちにサクッと追い抜かれましたね。三谷幸喜さんの舞台『子供の事情』(17年)に出させてもらったときに安藤も見に来てくれたんですが、天海祐希さんも大泉洋さんも吉田羊さんも皆さん揃って楽屋に来た安藤と親しそうに挨拶してるわけですよ。小池栄子ちゃんに至っては役者の先輩だって安藤に対して尊敬の念を抱いていて。複雑ですよ、まあ、うれしいんですけどね」