“絶滅寸前の昭和”を探し駆けずり回る悪戦苦闘の日々である
東映で「仁義なき戦い・代理戦争」の梅宮辰夫や小林旭を見て、日活で「濡れた荒野を走れ」の山科ゆりの切ない乳房を見にハシゴしてから、隣かはす向かいに必ずあった「純喫茶」でわいわい言い合ったものだ。スタバやタリーズの人ごみで映画のことなど話す気にもなれない。「万引き家族てどやねん?」「オレには憂鬱やったわ」と語れる場所が純喫茶だったのに、もはや絶滅寸前だ。
朝早く来過ぎたら、トースト&ゆで卵のモーニングサービスを食べ、気分を整えて入るのが映画館だったが、今はどの町の外れにもあるあの大量販店で格安シャツを買い、中にあるシネコンという「映画コンビニ」に立ち寄って、格調もヘチマもない映画をついでに眺める客ばかりだ。3日経ったら結末さえ忘れてしまう映画モドキしかないのも情けないことだが。
大量販店に集まるのが文明人か知らないが、ボクにも、故ジョージ・A・ロメロ監督が遺産として残してくれた「ゾンビ」に見える。安けりゃいいと買い漁るゾンビたち。中国人観光客をバカに出来ない、文化の死んだ風景がそこにはある。
でも、ボクらは映画のために、文化を生み続けた昭和の風景を探すしかない。「小屋」「純喫茶」「活気ある商店街」、何もかもが跡形もない所に立ちすくみ、幻影を思い浮かべるしかない。昭和41年の大映映画「赤い天使」の従軍看護婦に扮した若尾文子さんのポスターを、さて、どこの壁に貼れば絵になるんだ? 今、そんな文化の漂う街がどこにある? CG画像で描けばいい? そんな問題じゃない。悪戦苦闘の日々だ。