学校で「親父が座布団10枚取ってから言え」とバカにされ…
「僕がある演芸会の楽屋に息子を連れて行ったんです。ケーシー高峰さんや好楽さんがいて、皆でバカっ話をして笑い合ってるわけですよ。それが高座に上がるとキッチリ芸を見せて客を笑わせている。そのことに息子は驚いたようです」
「この人たちは凄いと。大学で学んだ演劇とまるで違う。演劇は出演の1時間前からメーキャップして衣装を着けて準備に時間をかける。なのにこの人たちは出番直前までくだらない下ネタでバカ笑いしてて、高座に上がると短い時間で客席を沸かせる。それがめちゃくちゃ格好よく見えたんです」
木久扇は息子の意思をおかみさんから聞いた。
「宏寿が落語家になりたいと言ってるんだけど、うれしい? って聞かれたんです。当時から長女がマネジャーで、この上息子が弟子になったら、四六時中家族が周りにいることになって監視されてるみたいと思ったけど、当人がなりたいというならしかたないと賛成しました」
(聞き手・吉川潮)
▽はやしや・きくおう 1937年、東京生まれ。60年、3代目桂三木助門下入門。61年、三木助没後、8代目林家正蔵門下へ移り、林家木久蔵となる。65年、二つ目昇進。73年、真打ち昇進。92年、落語協会理事に就任。2007年、親子ダブル襲名により林家木久扇を襲名。10年、理事職を退き相談役に就任。
▽はやしや・きくぞう 1975年、東京生まれ。95年、玉川大学文学部卒業後、父である林家木久蔵に入門。前座名は「きくお」。99年、二つ目昇進。07年、真打ちに昇進し、父の名、2代目「林家木久蔵」を襲名。