木久蔵「ほめて下さい。僕はほめられて育つタイプなんで」
私も演芸評論家として「木久蔵の息子」に注目していた。父親とはまた違った「坊ちゃんキャラ」で面白いと。
1999年、二つ目に昇進。同じ落語家ジュニア仲間である林家いっ平(現三平)と2人で昇進披露の会を開いた。その夜遅く、会を見に行った私のところに木久蔵から電話があった。「今日は来ていただいてありがとうございました」まではよかったが、その後がふるっている。「今日の僕の落語、ほめて下さい」と言うのだ。普通は「いかがでしたか」と評を求めるものだが「ほめて下さい」とは驚いた。
「先生にほめてもらえば自信がつくと思って。僕はほめられて育つタイプなんで」
私はきくお君のよかったところを懸命に思い出してほめてあげた。
「『疝気の虫』の虫がよかったってほめていただきました。うれしかったです」
こういう屈託のなさが気に入り、以来、私は木久蔵をほめるようにしている。
2007年、きくおは入門11年で真打ち昇進を果たす。父親の喜び、いかばかりか。