亡くなって37年…師匠への愛情が名作「彦六伝」を生んだ

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 正月初席の浅草演芸ホール。第1部のトリを務めた木久扇は、十八番の「彦六伝」を演じ、客席を笑いの渦に巻き込んだ。このネタはどのようにして出来たのだろう。

「きっかけは1982年に彦六師匠が亡くなった際、献体をしたことです。師匠の遺言で、目までアイバンクにやっちゃって。だから遺体と対面してないし、葬儀さえやらせなかった。それが悔しくてね。せめて師匠の名前と逸話だけでも後世に残したい。そう思ってまくらで思い出話をしゃべったら受けまして、付け足しているうちに40分近い一席になったんです」

 彦六が83歳で老人ホームの慰問に行き、「皆、俺より若えのばかりだ」と言ったとか、選挙の応援(いつも共産党)に団地に行った際、「長屋の皆さん」と呼びかけたなど、どこで演じても受けるネタだ。

「師匠の逸話集という新しいジャンルの鉱脈を見つけたわけです。亡くなって37年も経つのに、いまだに師匠のネタで稼いでるのは僕くらいのもんでしょう。学校寄席で学生にも受けます。当然、誰もが彦六を知らないのに、『体と声が震える面白いお爺さんの噺』ということで笑ってくれるんですね」

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