愛称「木久ちゃん」継続の戦略が大当たりした襲名披露興行
2007年、木久蔵という名跡を息子のきくおに継がせることにして、新たな芸名を「笑点」の視聴者から募集することにした。
「人気番組なんで驚くほど集まりました。いくつかに候補を絞って、僕自身が選んだのが木久扇です。『おう』という音は『王』『翁』と同じだからいいなって。しかも『木久ちゃん』の愛称はそのままです」
この戦略は見事に当たり、襲名披露興行は寄席だけでなく全国の地方公演も大入り続きだった。
当時の記者会見で、木久扇は、「落語は奥深いものですが、その入り口で私が宣伝マンを務めたい」と語った。立派な所信表明だと感心したものだ。
「落語ファンを増やすためには落語を全国に広める人がいないとダメなんです。どうして古典落語をやらないんですかと聞く人がいるけど、僕だって彦六の弟子だからできないわけじゃない。でも僕が古典やったってしょうがないでしょ。小三治さんみたいに古典をやって頂点を極める人と、僕みたいなタイプと両方いなくちゃいけないんですよ。それぞれの役割がある。僕は僕のやり方で多くのお客さんを増やしたと自負してます」