愛称「木久ちゃん」継続の戦略が大当たりした襲名披露興行
木久蔵を継いだ息子はどう変わったのか。
「しばらくは僕が木久蔵だと認識されなかったですね。北海道の落語会から事務所に『木久蔵師匠お願いします』という出演依頼がありまして。僕が現地に行ったら主催者が、『お父さんをお願いしたはずですけど』と言う。『僕が木久蔵継いだんです』と言ったら、『うーん、やられた』だって。詐欺にあった人みたいに」
主催者の気持ちは理解できる。
「結果的に木久蔵を継いで親孝行できたと思ってます。襲名の7年前に父が胃がんの手術を受けた時は、初めて父親の庇護がなくなる現実を考えましたが、手術で治った。襲名の7年後に喉頭がんを宣告された時は、『いよいよ来たな』と覚悟しました。談志師匠が同じ病気で声が出なくなって高座復帰できないまま亡くなってますから。それが放射線治療で完治した。本当によかったです」
「息子が見舞いに来るのはうれしいんだけど、僕の病院食、みんな食べちゃうの」
「元気づけようとして、わざとやったんですよ」