「桜田門外ノ変」どこか喜劇じみた大老・伊井直弼の最期
彼らが井伊を狙った背景には藩主・徳川斉昭が永蟄居(えいちっきょ)を命じられ、家老・安島帯刀らの命を奪われたことへの憤まんがあった。そこで自分たちの意に沿うよう幕府を変革するため決起。だが皮肉にも井伊を殺したことで徳川幕府の権威は失墜、滅亡という結果を迎えた。善かれと思ってやったことが裏目に出てしまった。
一方、井伊は暗殺計画を知りながら屋敷を出た。劇中で描かれている通り、警護の侍は刀を柄袋で覆い紐で縛ったため即座に抜刀できなかった。危機意識の欠如によって殺され、幕府の滅亡を招いたと考えれば、井伊の決断は軽薄だったともいえる。しかも井伊は膝から腰まで貫通する銃弾を浴びて立ち上がることができなかった。免許皆伝の居合の技も使えずあっさり首を取られたとは、どこか喜劇じみた話である。
(森田健司/日刊ゲンダイ)