なんでんかんでん店主の川原ひろしさんは味を追求し再挑戦
■4歳からバイオリンやピアノを学んだ“お坊ちゃま”
さて、福岡・博多生まれの川原さんは、父が貿易商社社長、祖父の弟がめんたいこの名門「ふくや」創業者、遠戚には往年の大ヒット歌手・本郷直樹という家系。4歳からバイオリン、ピアノ、声楽を学んだ“お坊ちゃま”だ。
オペラ歌手を目指して上京したが音大受験に失敗し、シャンソン歌手を経て人気漫才コンビ・Wけんじの前座歌手に。それをきっかけに歌謡ショーの司会も引き受けるようになった。
「春日八郎さん、マヒナスターズら大御所や人気歌手ばかり。それが役に立ち、今も司会業が僕の重要な仕事のひとつなんです」
当時、感じていたのが、「東京には本格的な豚骨ラーメンがない」こと。そこで一念発起。87年7月、都内世田谷区羽根木の環七沿いに「なんでんかんでん」をオープンさせた。
「最初は都内の福岡出身の人たちの間で評判になり、テレビで取り上げられて一挙にお客さんが増えました。『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京)の中華料理の達人、金萬福さんのロケの頃には全国からお客さんが来るようになったんです」
わずか13坪で営業は夜だけなのに、1日の最高売り上げは120万円。年商は3億円を超えた。
「でも路上駐車がひどくて、一晩に50件も110番通報された揚げ句、パトカーが常駐する始末。迷惑だ! とデモをかけられたことも」
店の繁盛は、川原さんの明るいキャラも見逃せない。
「連日、1時間2時間とお待たせするのが申し訳なくて、店頭でお笑いライブやマジックショーをしたこともありました」
また、起業家が出資者を募る「マネーの虎」出演で、追い風が吹き続けた。
だが、景気後退と若者の車離れ、近隣からの苦情などで次第に売り上げは低迷。「マネーの虎」で投資したビジネスもパッとせず、ついに閉店。
「『倒産』『借金5億円』なーんて書かれたことがありました。でも倒産はしてないし、借金も個人的なのが数千万円。まあ、有名税みたいなもんですね。アハハハ」
今後の展開は?
「ここのフランチャイズのほか、長崎チャンポンや博多風うどんの店も考えてます。それと海外。先日、10日間ほど欧州へリサーチに行ってきたところです」
経営や接客に関するセミナー講師、歌手、町おこしイベントのゲストなど、飲食以外の仕事も多い。
「ジッとしてるのはダメ。僕の健康法ですね」
(取材・文=高鍬真之)