冒頭から涙が…観客の心揺さぶるレッドフォードの深い皺
映画を見て画面に映る俳優の皺(しわ)に泣ける、そんな初めての経験をした。米映画の往年の大スター、ロバート・レッドフォードが主演した「さらば愛しきアウトロー」である。レッドフォードの顔に深く刻まれた皺を見た途端、涙がにじんできた。
映画は冒頭、銀行に押し入り自動車で逃走するレッドフォード扮するフォレスト・タッカーなる男の目元をアップにする。ここで、その深い皺があからさまになる。次に全体の皺を写していく過程で涙は収まりがつかなくなった。
多数ある彼のかつての作品で精悍(せいかん)な二枚目ぶりを知っている。しかし、だからといって皺だらけになったレッドフォードに何か憐憫(れんびん)のような思いを抱き、涙が出たというわけではない。正真正銘、皺そのものが見事なのだ。皺がレッドフォードの顔を以前にも増して風格あるものにしている。その魅力に涙腺が反応したとしかいいようがない。
俳優の皺といえば、最近ではクリント・イーストウッドが知られる。ただ、イーストウッドの皺を見ても涙は出ない。彼の皺は役柄からの延長線上の証しのような趣があり、妙な安心感があるからだ。もちろん、イーストウッドの皺もまた見事だが、顔全体との一体感が強く、すんなりと受け止めることができる。