かゑるのまま真打ちに「馬風」襲名のきっかけは息子の一言
談志のこんなアドバイスもあった。
「売れてるのに、10人一緒の昇進なんて不満だろう。ここはかゑるのまま真打ちになって、近いうちに馬風を継いで襲名披露興行を派手にやればいいさ」
それで馬風襲名をいったん断ることにした。小さんは受けるものと思っていたようで機嫌が悪かったという。
「真打ちになってしばらくして、うちのせがれが幼稚園に入った。音楽の時間、皆で『カエルの歌』を合唱するのに、せがれだけ歌えないってんだ。父親がかゑるという芸名だと知ってるからな。先生も気が付いて謝ったらしいや。せがれがうちに帰って来て、『かゑるって名前、やだよ』と言う。『じゃあ馬はどうだ』と聞いたら、『お馬さんは大きくていいや』と答えた。それで馬風になる決心がついたね」
親心である。
(つづく)