「小さんのお供してたんで女関係まで全部知ってるからな」
馬風が入門した1956年当時、5代目小さん門下には小せん、さん助(共に先代)、つばめ、そして談志(当時は小ゑん)がいた。
「志ん朝(当時は古今亭朝太)が同期でね。楽屋で師匠連に挨拶すると態度が違うんだ。志ん朝には『志ん生師匠の息子さんだってね。がんばんなさいよ』で、俺が床屋のせがれだと言うと、『親不孝だね』だよ。小さんのおかみさんによく言われたな。『朝太に負けるんじゃないよ』って。おかみさんはいい人だった。ただ、新築したばかりの家だから掃除が大変。ちょっとでも手を抜くと、『小光、廊下が汚れてるよ』と怒られる。そのたびにから拭きしてワックスかけたもんだ」
小光はよく働き、小さんの長男の面倒も見た。
「小学校3年生で、夜中に小便に起きる。寝ぼけてるから俺が便所へ連れてって、おちんちんを出してやって指でつまんで小便させる。それが今の小さん(6代目)だよ。あの野郎、さんざん面倒かけやがったから、小さんを継いでも尊敬できねえんだ」
6代目もとんだ弱みを握られたものである。