「今の若手はしくじりもしねえ。芸人の匂いがねえんだ」
元落語協会会長、現協会最高顧問。これが鈴々舎馬風の肩書である。今年の12月に傘寿(80歳)を迎えるが、今でも寄席の客席を沸かせる爆笑の漫談を演じている。
今回は師匠の先代柳家小さん、兄弟子の立川談志、同期の親友、古今亭志ん朝らの思い出などを含め、大いに語ってもらった。
「俺たちの世代は昭和の名人の落語を聞き過ぎたね。志ん生、文楽、円生、小さん、そういった師匠連の高座を聞いてるから、この噺はあの師匠の十八番だからやっちゃいけない、この噺は若手にはとてもできねえと思ったもんだ。ところが、近ごろの若手は名人の得意ネタ、大ネタを平気でやって客を疲れさせるんだ。だから俺なんかは、疲れさせないことを心掛けてるね」
漫談で爆笑させるのはそういう理由があったのだ。確かに馬風の高座は楽しく、客を疲れさせない。
「俺の若い時分は、落語家になるしかなかったという連中ばっかりだった。円鏡(後の橘家円蔵)、志ん駒、小益(現文楽)、皆そうだ。ところが、昨今はサラリーマンみたいな了見の若者が落語家になる。たいてい大学を出てて、社会人経験者も増えた。昔の楽屋は女と博奕の話で、それも失敗談ばかりよ。今の若手はしくじりもしねえ。芸人のにおいがねえんだ」