「円歌さんが会長をやりたがっています」と小さんに進言し
1996年、柳家小さんが落語協会会長になって24年経っていた。1月に軽い脳梗塞で倒れたものの、5月には復帰している。その病気のこともあって、馬風は決意を固めた。
「俺と師匠のせがれの三語楼(現小さん)で、会長を退任させようと説得しに行ったんだ。『いつまで会長をやってるつもりですか』と聞くと、『誰かにやらせるって、いねえだろう』と言う。『円歌さん(当時の副会長)がやりたがってます。そろそろいいじゃないんですか』と進言した。三語楼も賛同したから、小さんはしばらく考えてたよ。そして、ぼそっと言ったね。『おめえたちの言う通り、円歌に譲るか』と」
馬風は会長になりたがっていた円歌の気持ちを忖度したとも言える。
「次の日の朝、俺は円歌宅に電話した。『兄さん、おめでとうございます!』。『何?』って聞くから、『次期会長に決まりました』と報告したら、やっこさん、バカな喜びようだ。早速鯛の尾頭付きを祝いに贈った。この時、俺は円歌さんに恩を売ったね」
8月1日付で円歌会長、志ん朝副会長の新体制がスタートした。志ん朝の副会長就任は当然、次期会長含みである。