「大御所扱いされるってえのも考えもの。まず仕事が減る」

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 2010年、会長を退任するにあたって、後任に意中の落語家がいたらしい。

「実は春風亭小朝にやらせたかったんだ。協会全体の若返りの意味もあってな。ところが、小朝は会長職なんかに興味がなくて、やりたがってないようだ。それで、兄弟弟子の小三治に頼んだわけよ」

 その小三治も2014年に退任。後任に柳亭市馬(当時52歳)を指名し、若返りが実現した。その際、馬風は最高顧問になる。

「大御所扱いされるってえのも考えものだよ。まず仕事が減る。業界関係者や後輩連中が、ちょっとした仕事だと、『恐れ多くて最高顧問には頼みづらい』って遠慮しちゃうんだ。こっちはどんなとこでも気軽に出るのにさ。それで近ごろは寄席ばっかり。歩けるうちは出るつもりだよ。修業させてもらった恩返しと思ってな」

 ちなみに、落語芸術協会の最高顧問、桂米丸は94歳で、現在も寄席に出ている。最高顧問は長生きなのだ。

「だったら最高顧問でいいか。最高肛門じゃまずいけどな」

 最後に笑わせた。このシャレっ気が馬風の身上である。 (おわり)

(聞き手・吉川潮)

【連載】鈴々舎馬風 大いに語る

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